住み替えローンってなに?

A.返済中の住宅ローンとこれから購入する家の資金、仲介手数料などの諸経費を合わせて借りられるローンです

「子どもが生まれて家が狭くなった」「転職したので、もっと交通の便のいい場所に引っ越したい」など、住宅ローン返済中の家を売却し、新しい家の購入(住み替え)を検討する際、どんな点に注意すればいいのでしょうか? 住み替えローンについてまとめました。

住宅ローン返済中に住み替える場合

現在、住宅ローン返済中の家に住んでいる場合、抵当権を消さない限り、勝手に売却することはできません。抵当権を消すには、住宅ローンを完済する必要があります。

売却したお金で住宅ローンの完済を検討する場合、早い段階で、今住んでいる家の査定を不動産会社に依頼することが大切です。いくらで売れるかわからないと、次に購入する家の資金計画が立てられないからです。一般的な木造住宅の場合、建物自体の価値は建てた時から下がりはじめ、築33年で価値はゼロになってしまうので、今住んでいる家の価値も購入時よりも大幅に下がっている恐れがあります。不動産会社によって査定額は違うので、複数の会社に依頼して少しでも高い金額で売れる可能性を探りましょう。

査定の結果、家の売却査定額が住宅ローンの残債よりも少なかった場合、家を売っただけでは返済中の住宅ローンを完済することはできません。貯金などの自己資金を充てて、残債を完済し、抵当権を消す必要性がでてきます。

しかし、実際には新居の頭金も必要になるうえ、貯金を充てるのが難しい場合もあります。そんな時に活用できるのが、返済中の住宅ローンとこれから購入する家の資金、仲介手数料などの諸経費を合わせて借りられる「住み替え(住宅)ローン」です。

住み替えローンとは?

住み替えローンは、ローン残債があることを考慮して、担保物件の1.5倍、2倍、3倍などの水準で借入が可能です。例えば、1.5倍のケースであれば、ローン残債2,000万円、売却価格1,000万円で、住み替え先の担保評価2,000万円のマンションを購入したい場合、3,000万円が融資されるので、住み替えが可能になります(厳密には、さらに諸経費や引越し費用もかかる)。

但し、住み替えローンは、通常の住宅ローンよりも高額な住宅ローンを組むことになるため、年収など属性の審査基準が厳しくなっています。例えば、一般的な住宅ローンの申込み条件は、年収は300万円~400万円以上がほとんどですが、住み替えローンは年収400~500万円以上に設定されている場合があります。頭金、勤務先、勤続年数、年収、返済履歴、担保、保証人など各金融機関によって審査基準や重視するポイントが異なるので、利用する場合は条件をしっかり把握しておきましょう。

一方、前の家の住宅ローンを完済した上で、新たに不動産を購入する場合は、住み替えローンではなく、通常の住宅ローンを新規に申請することになります。

住み替えローンの流れ

住み替えローンは、これまでの住宅ローンの残債を一括で返済する日と、住み替えローンの融資実行日が同じ日でなければなりません。この条件を満たすためには、売却する家の買い手・売買金額の確定、新しく購入する家の契約書作成、仲介手数料の確定、新旧の家の登記事項証明書(登記簿謄本)の名義変更手続きを一日で済ませる体制を整えておくことが必要です。当然、仲介する不動産会社や司法書士、金融機関の担当者の協力が欠かせません。

また、「売り」「買い」を同時に行うので、確定申告など税金に関係する手続きは税理士に依頼することをお勧めします。まずは、売却の仲介を依頼した不動産会社に相談してみましょう。今の家の売却と新しい家の購入が同じ仲介会社で済むなら、タイミングを計るための手間がかなり軽減されます。住み替えローン自体も、返済中のローンを取り扱っている金融機関で組むことができれば、一連の流れをスムーズに実行することができます。

尚、住み替えローンの基準になる情報は新しい家の売買契約書です。今の家の売却と新しい家の購入を同時に行うことが前提なので、「思ったように買い手が見つからなかったら…」「狙い通りの金額で売れなかったら…」という不安がつきまといます。売却の時期や金額が確定しない場合は、契約書に「買い替え特約」を組み入れることを売主に相談してみましょう。

これは「手放す予定の家が、いつまでに、いくら以上で売れなかった場合は、新しい家の購入契約を白紙に戻してください」という約束事です。もちろん、必ずしも組み入れてもらえるとは限りませんが、売主が不動産会社の場合は応じてもらえる傾向にあります。「買い替え特約」をつけることで、手付金を取り戻したり、違約金を支払う必要がなくなったりと、住み替えに伴う不安要素が軽減されます。

ローンを利用する際の注意点

住み替えローンを利用するということは、当然、新規でローンを組んだときよりも歳を取っていて、30代後半以降が大半のはずです。子どもの進学、就職、結婚、孫の誕生…出費がかさむ節目も予想されるので、充分に余裕を見込んだ返済計画を立てなければなりません。

前述の通り、住み替えローンとは「返済中の住宅ローンの残債+新しい家の購入代金+各種手数料」で組むことになります。住み替え先の担保評価よりも多い金額をローンで支払うので、「万が一、返済に行き詰まったら、家を売ればいい」では済まない恐れもあります。実際、新しく購入した家が適正な価格で売れたとしても、前の残債を加えて膨らんだ住み替えローンの残債を、一括で繰り上げ返済するのが難しいケースが少なからずあります。家を手放しても、その後の生活が圧迫されてしまうことも充分に考えられるのです。

「借り入れ可能額=支払っていける額」なのか、客観的かつ慎重に検討するのが肝心です。何歳で完済するのか、定年後にローンが食い込むことになった場合はちゃんと支払っていけるのか、きちんと計算しましょう。

まとめ

端的に言えば、住み替えローンは「オーバーローン(住宅ローンを組む際に、本来住宅に必要な額以上の金額を融資してもらうこと)」です。将来、起こりうる想定外の出費にもある程度、耐えられる契約内容でなければなりません。住み替えは、最初の家の購入より手続きが面倒になるので、必ず信頼のおける不動産会社に相談しましょう。